Rabbit Blue

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時には僕だって、




 寝ていても頭がぐらぐらする。
 身体が重く、熱い。ここまで体調を崩すのは久しぶりだった。
 兄さんが呼んだ医者の話では、疲れがたまっていたのだろう、ということだ。
 そう言われれば思い当たることは沢山あって、納得せざるを得ない。
 たまには、息抜きも必要だよ。ゆっくり休みなさい、と告げられた。

 身体も弱く、未熟児で産まれた僕は、小さい頃は今のように体調を崩すことがしばしばあった。
 熱を出せば、神父(とう)さんや兄さんが傍に付いていてくれることが嬉しかった。
 けれど、普段元気すぎるほどだった兄さんが心配そうに傍にいてくれることが申し訳なかった。
 祓魔師を目指すようになってからは、体力をつけ、体調管理もしっかりしていたので、風邪を引くこともなかったのに……
 そう思うと情けない。僕がしっかりしないといけないのに。
 はぁ、と溜息をつけば、静かな室内に響いた。
 旧寮に人はいない。
 兄さんも今の時間は学校だろう。静か過ぎる室内に少しだけ寂しさを感じたその瞬間、額に何か冷たいものが触れた。
「お、起きたのか?」
 うっすらと目をあければ、間近で兄さんが顔を覗きんでいる。
「にい、さん……?」
「おかゆ作ってきたから、食べれそうなら食べるか? 薬も飲まねぇとな」
 何故、兄さんがいるのだろう、と思いながら頷くと、額に乗せられたタオルを取り、ゆっくりと身体を起こしてくれた。
「兄さん、授業は?」
 机に置いていた土鍋を運ぶ兄さんに問いかければ、事も無げにサボった、と返ってくる。
「雪男一人にしておけねぇだろ」
「……そんなんだから、バカになるんだよ」
 嬉しい気持ちを押し殺して、そう告げれば、兄さんの尻尾がピン、と伸びた。
 猫みたいで、思わず苦笑を浮かべると、膝の上にいささか乱暴に土鍋が乗ったトレーが置かれる。
「うるせぇ! 熱いから気をつけろよ」
 怒った様子を見せながらも、傍を離れる気がないのか、兄さんはベッドに腰を下ろした。
「ねぇ、兄さん」
「なんだよ」
「動くのもだるいから、食べさせてくれない?」
「しょ、しょうがねーな!」
 頼られるのが嬉しいのか、兄さんは照れたように頬を僅かに赤くする。
 そんな兄さんに、今日は少しばかり甘えることにしようと思った。





END