Rabbit Blue
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天使と悪魔と俺
最近、気になる人が出来た。
同じ塾生のかわええあの子。
明るくて、元気で、いい人で、料理も上手で。文句なしや。
これで女の子やったら完璧なのに、と思わずにはいられへん。
なんせ気になるお相手は、杜山さんでも出雲ちゃんでもない。
魔神(サタン)の子、奥村燐くんや。
かつてはエロ魔神とあだ名をつけられたこの俺がホモになったんかと思ったけど、
今でも女の子大好きやし、奥村くん以外の男なんて興味ないから、きっと奥村くんがトクベツなんやろう。
そう思うことにした。
奥村くんは、双子である奥村先生とケンカをするたびに俺ンとこにくるようになった。
俺を頼ってくれるんは嬉しいけど、話を聞いとると奥村先生との仲の良さを見せ付けられとるみたいで、少し面白くない。
けど、これはこれで役得やと思うようになってん。
こう、精神的に弱っとる奥村くんに付け入るチャンスやん?
俺のカッコよさアピール出来るし、相談に乗る俺との仲も急上昇や。
幸い、奥村くんには警戒心っちゅーもんがない。
こんな無防備でよく今まで大丈夫やったな、と思うわ。
今も俺の隣でしょんぼり肩を落として寂しそうにしてはる。
あぁ、アカン。押し倒してしまいそうや。
それはいきなりすぎるから、ここはさりげなく肩でも組もうかと、そっと腕を回そうとしたその時、
「兄さん、こんなところにいたの?」
奥村くんがしょげている原因でもある奥村先生の登場や。
チッ、ええところでホンマ邪魔してくれるわ。
いっつもええとこで邪魔してくれはるんやから、どっかで監視でもしとんやないかと思ってまうわ。
「ほら、志摩くんにも迷惑だから戻ろう?」
先生のその言葉に、奥村くんが俺を見る。そんな可愛い顔せんといてや……理性飛んでしまうやん。
ってか、勝手に迷惑とか決めんといて欲しいわ。
「――わかった。志摩、悪かったな」
「ええんよ。またいつでも相談乗るし」
「お前、ホントいい奴だな!」
「だからいつもゆうてるやろ。俺はいい人やて。
ほら、先生待ってはるで」
サンキューと手を振って、奥村くんは先生のもとへ駆け寄っていく。
先生が会釈をして、奥村くんに何かゆうてはるけど、内容までは聞こえへん。
たぶん、小言言われてるんやろうけど。
それにしてもキラキラと瞳を輝かせた奥村くんはホンマかわええ。マジ天使や。
二人ぎゃいぎゃい騒ぎながらも仲良さそうに帰っていく姿を見送りながら、俺も自分の部屋へと戻る。
しっかし、嫉妬心向きだしでこっち睨む奥村先生の方がよっぽど悪魔みたいやわ。
終わっておく。