Rabbit Blue

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雨の中ただ佇む君は




 雨の中、ただ佇んでいた君の顔は今にも泣き出してしまいそうで。
 そのままにしておいたら、このままどこかに消えてしまうような感じまでもした。



「なぁ、奥村くん。そないに溜め込んどったら、いつか爆発してしまうで」
 ずぶ濡れになった燐を自分の寮部屋へと連れ帰り、バスタオルで濡れた頭を拭いてやりながら廉造は話しかける。
「奥村先生も、隠し事うまそうやけど、奥村くんは輪をかけてうまいなぁ。やっぱお兄さんなんやな。
 うちの兄貴たちも知らんうちに溜め込んで、急に爆発しよんねん。兄貴っちゅーのも大変やな」
 タオルを肩にかけ、着替えを差し出すと廉造はあったかい飲みもんこうてくるわ、と部屋を出ていった。
 志摩の優しさにじわりと冷え切っていた心が温かくなる。
 うまく隠していたつもりだった。
 雪男にはこれ以上心配をかけたくなかったし、唯一頼れる人であった父はいなくなってしまった。
 色々なことが重なりすぎて、それでも前に進むしかなくて。
 でも、不意に不安になって。自分の中でうまく処理しきれなくなった。
 のそのそと着替え終わる頃に、志摩が部屋に戻ってくる。
「ほい、あっついから気ぃつけや」
 そういって差し出された湯気の立つ紙コップを受け取り、燐は小さく礼を告げ、紙コップに息を吹きかけた。

「……色々サンキューな」
「ええんよ。奥村くん元気ないと気になるし。俺で良かったらいつでも話し聞くさかい。いつでも頼ってや」
 あ、泣きたいときはいつでも胸貸したるよ、と両腕を広げて笑って見せれば、そのままぽすりと燐が腕の中におさまる。
「少しだけ、貸してくれ」
 慌てる廉造に囁くようにそう告げる燐に、廉造はそっと背中に腕を回し、抱きしめるのだった。