Rabbit Blue

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酔っ払いからのプレゼント




 ――なんで、こんなことになってしもたんや



 自分に跨るすぐ上の兄に廉造はただ、冷や汗を流すのだった。



 **********



 事の始まりは数時間前。

「廉造、ちょお来ぃ」
 ちょいちょいと襖の隙間から柔造に手招きをされたことだ。
 何?と尋ねながら柔造に近付けば、手をとられ、ぐいっと室内に引き寄せられる。
 バランスを崩し、柔造に倒れ掛かるが、そこはしっかりと抱きとめられ、なんとなく気恥ずかしくなった。
「いきなしなにすんの……」
「誕生日やろ。兄ちゃんケーキ用意したさかい、食ってき」
「俺が買うて来たんやで、感謝して食えよ!」
 既に切り分けたケーキを食べながらそう告げる金造に、廉造は先に食うとるやん、と呆れたように呟き、柔造の隣に腰を下ろした。


 それから、他愛のない会話をしながら、大人しくケーキを食べていると、れんぞー、と柔造に肩を組まれる。
 今度はどうしたのだ、と尋ねる前に顎を掴まれ、唇を塞がれた。
 突然の行動に、廉造は手に持っていたフォークを落とす。
 引き剥がそうにも、身体はがっちりと押さえつけられ、びくともしない。
 ぬるりと割り込んできた舌は、甘いピーチの味とアルコールの匂いがして、きっと柔兄は酔っているのだ。そうだ、そうに違いない、と廉造は思い込むことにした。


「兄ちゃんからのプレゼントや」
 ようやく離れたと思えば、ニカッと笑みを浮かべそう告げた柔造にアホか、と思わず突っ込みそうになる。
 そしてそのままずるずると体勢を崩し、寝息を立て始めた柔造に、廉造は溜め息をついた。
 ケーキはまだ残っているが、このまま食べ続ける気にもならない。
 自室に帰ろうと思ったところで、背後から抱きしめられた。
「き、ん兄……?」
 途中から静かだったので、忘れていたが、そういえばこの部屋には金造もいたのだ、と思い出す。
 殴る、蹴るは日常茶飯事だが、こんな風に抱きしめられることなどない。
 嫌な予感がする、と思いながら、振り返れば、むちゅ、と唇に柔らかい感触。
「柔兄からのプレゼントがちゅーなら、俺はもっとええもんやるさかい、おとなししとき」
 よいせ、と体勢を入れ替え、ニィ、と口角を持ち上げた金造に、廉造は考えることを放棄するのだった。